固有値解析の手順
製品を開発する設計者にとって、振動問題に直面するケースは少なくないと思います。
振動する対象物の固有値を計算して共振の有無を把握し、固有値を変える対策を打つことで振動解決に繋げることができます。
本記事ではオープンソースのCAE:PrePomaxを使用した固有値解析の手順について紹介します。
固有値とは
固有値とは、構造物が自然に振動しやすい性質を表す値で、振動問題では固有振動数として扱われます。例えば音叉は、叩くと決まった高さの音を出します。これは音叉の形状・材質・質量によって、特定の周波数で振動しやすい固有振動数を持っているためです。機械部品や架台も同様に固有振動数を持ち、外部から近い周波数の振動を受けると共振し、大きく揺れる場合があります。
例えば、モーター架台の固有値が30Hzであった場合、1800min-1で回転する誘導モーターの回転周波数30Hzと一致し共振する可能性があります。固有値を把握することで、モーターや歯車などの一定の周波数を発生する機器と干渉するかどうか(=共振するかどうか)を把握することができます。
解析モデル
一例として下図のような台で計算を実施してみます。

解析モデル(正面から見た図)

解析モデル(背面から見た図)
解析ソフト
今回はPrePoMaxを使用しました。
PrePoMaxは、オープンソースの有限要素解析ソフト「CalculiX」を使いやすく操作するためのGUIソフトです。3D CADデータを読み込み、メッシュ作成、材料設定、拘束条件、荷重条件を設定して、静解析・非線形解析・固有値解析・熱解析などを行えます。有償の商用CAEに比べて導入コストを抑えられますが、部品間の拘束のしやすさやnode IDの確認など、使いやすさの面では一部劣ることもあります。
解析手順
以下の手順で解析を進めて行きます。

PrePoMaxの画面
1. 3Dモデルを読み込む
File → Import からSTEP、IGES、STLなどの3Dデータを読み込みます。
対象部品が複数ある場合は、接触条件や結合条件が必要になるため、まずは単品モデルで確認すると進めやすいです。
2. メッシュを作成する
Mesh → Mesh Setup Item → Createでメッシュ長を指定します。今回は最大11mm、最小0.21mmで設定しました。
続いて Mesh → Create Meshでメッシュを生成します。
3. 材料を設定する
Property → Material → Create で材料を作成し、以下を入力します。
- ヤング率
- ポアソン比
- 密度
今回はSS400として、ヤング率:206000MPa、ポアソン比:0.3、密度:7.85E-09t/mm3に設定しました。
4. Sectionを作成する
Property → Section → Create で設定した材料を対象となる部品に割り当てます。
5. 解析ステップを作成する
Step → Step → Create → Frequency Stepで固有値解析の設定を行います。
設定する主な項目は以下です。
- 求めるモード数
- 周波数範囲
- ソルバー設定
デフォルトでは以下のようになっています。
- モード数:10
- 周波数範囲:Default
- ソルバー:Paradiso
周波数がDefaultとなっているので、10次のモードがでるまで周波数の上限を上げていく設定になっています。 Pradisoは大規模な疎行列連立一次方程式を解く際に用いられるソルバーです.
今回はデフォルトのままで解析をしました。
6.境界条件を設定する
Step → BC → Create から固定条件を設定します。
固定支持:Fixedを選択し、モデル上で拘束する箇所を選択します。
固有値解析では、拘束条件によって結果が大きく変わります。 完全自由状態で解析すると、剛体モードとして0Hz付近のモードが出ます。
今回は接地する底面部を2箇所拘束しました。
7.解析実行
Analysis → Runで解析を実行します。
エラーが出た場合は、まず以下が当てはまっていないかどうかを確認しましょう。
- 材料に密度が入っているか
- Sectionが割り当てられているか
- メッシュが作成されているか
- 拘束条件が適切か
- 部品同士が未接続になっていないか
8. 結果を確認する
解析完了後、Resultsをクリックして固有振動数とモード形状を確認します。
今回は1次から3次のモードが下図の通りとなりました。(4次~10次は割愛します)

固有値解析の結果(モード1次:152Hz)

固有値解析の結果(モード2次:152Hz)

固有値解析の結果(モード3次:243Hz)
さいごに
固有値解析は、製品開発の早い段階で共振リスクを把握し、形状変更・補強・質量調整などの対策方針を検討するうえで有効な手段です。PrePoMaxを活用すれば、商用CAEを導入していない場合でも、基本的な固有値解析を行うことができます。
ただし、解析結果は拘束条件、材料物性、メッシュサイズ、部品同士の結合条件によって大きく変わるため、結果をそのまま信じるのではなく、実機の使用条件と照らし合わせて判断することが重要です。
メカクリエイツでは、PrePoMaxを用いた固有値解析や振動解析、解析結果を踏まえた構造改善案の検討もお手伝いできます。架台・筐体・機械部品の振動問題でお困りの際は、お気軽にご相談ください。