キー溝の設計方法をわかりやすく解説|平行キーの選定・強度計算・設計時の注意点

モーター軸にプーリや歯車、カップリングなどを取り付ける際、軸と相手部品を確実に回転させるために使われる代表的な締結方法がキー締結です。

キー締結は構造がシンプルで、機械装置や産業機器でも広く使用されています。一方で、キー寸法やキー溝寸法を適当に決めてしまうと、キーの破損、キー溝の変形、ガタの発生、軸強度の低下などにつながることがあります。

本記事では、機械設計者向けに、キー溝設計の基本手順、強度計算、図面指示、設計時の注意点について解説します。

キー溝とは

キー溝とは、軸とボス側部品の間にキーを入れるための溝です。

軸にプーリや歯車を差し込んだだけでは、トルクがかかったときに空転してしまう可能性があります。そこで、軸側とボス側の両方に溝を加工し、その間にキーを入れることで、軸の回転力を相手部品へ伝達します。

キーは主に回り止めとして機能します。
そのため、軸方向の抜け止めについては、止めねじ、止め輪、段付き軸、ナット、エンドプレートなどを別途設計する必要があります。

キーの種類

キーにはいくつか種類がありますが、一般的な機械設計でよく使われるのは平行キーです。

代表的なキーには以下があります。

種類 特徴
平行キー 最も一般的。軸とボスの回り止めに広く使用される
こう配キー キーに傾斜があり、打ち込みによって固定力を得る
半月キー 半月形状のキー。小型軸や位置合わせ用途で使われることがある

キー溝設計の基本手順

基本手順は次の通りです。

  1. 軸径を決める
  2. 軸径に合う標準キー寸法を選ぶ
  3. キー長さを仮決めする
  4. せん断応力と面圧を確認する
  5. 加工方法と図面指示を確認する

重要なのは、キー寸法を自分で自由に決めるのではなく、軸径に対応した標準寸法から選定することです。

平行キーやキー溝寸法は、一般的に JIS B 1301 などの規格に基づいて設計します。実際の図面作成時には、最新のJIS規格表やメーカー技術資料を確認してください。

1.軸径からキー寸法を選定する

キー寸法は、軸径によって標準寸法が決まっています。

例えば、軸径が20mm程度であれば、代表的には6×6の平行キーが選定候補になります。軸径が24mm程度であれば8×7クラスのキーが候補になります。

ただし、実際の設計では必ずJIS B 1301などの規格表を確認し、軸径範囲に対応したキー寸法を選定します。

学習用のイメージとしては、以下のようになります。

軸径の目安 キー寸法の例
10〜12mm程度 4 × 4
12〜17mm程度 5 × 5
17〜22mm程度 6 × 6
22〜30mm程度 8 × 7
30〜38mm程度 10 × 8
38〜44mm程度 12 × 8

この表はあくまで理解用の例です。
実務では、規格表に基づいてキー幅、キー高さ、軸側キー溝深さ、ボス側キー溝深さ、公差を確認します。

2.伝達トルクを確認する

キーは軸のトルクを相手部品へ伝える部品です。
そのため、設計ではまず伝達トルクを確認します。

モーター出力と回転数からトルクを求める場合は、以下の式を使います。

T = 9550 × P / n

  • T:トルク(N・m)
  • P:出力(kW)
  • n:回転数(rpm)

例えば、0.75kW、1500rpmのモーターであれば、

T = 9550 × 0.75 / 1500
 = 4.775 N・m

となります。
計算時には、N・mmに変換して扱うと便利です。

4.775 N・m = 4775 N・mm

3.キーに作用する接線力を求める

伝達トルクが分かれば、キーに作用する接線力を求めます。

F = 2T / d

  • F:キーに作用する接線力(N)
  • T:伝達トルク(N・mm)
  • d:軸径(mm)

例えば、

T = 4775 N・mm
d = 24 mm

の場合、

F = 2 × 4775 / 24
= 約398 N

となります。

4.キーのせん断応力を確認する

キーは、軸とボスの間で力を受けるため、せん断される方向に荷重を受けます。

せん断応力は以下で求めます。

τ = F / (b × L)

  • τ:せん断応力(MPa)
  • F:接線力(N)
  • b:キー幅(mm)
  • L:キー有効長さ(mm)

例えば、

F = 398 N
b = 8 mm
L = 28 mm

の場合、

τ = 398 / (8 × 28)
= 1.78 MPa

となります。

この値がキー材質の許容せん断応力以下であれば、せん断に対しては成立します。

5.キーの面圧を確認する

キー設計では、せん断応力だけでなく面圧の確認が重要です。

面圧とは、キーの側面が押しつぶされる方向の応力です。実務上、キーの不具合は、せん断破壊よりもキー溝側の変形や摩耗として現れることも多くあります。

面圧は以下で求めます。

σc = F / ((h / 2) × L)

  • σc:面圧、圧縮応力(MPa)
  • F:接線力(N)
  • h:キー高さ(mm)
  • L:キー有効長さ(mm)

例えば、

F = 398 N
h = 7 mm
L = 28 mm

の場合、

σc = 398 / ((7 / 2) × 28)
= 4.06 MPa

となります。

6. キー長さの決め方

キー長さは、強度だけで決めるのではなく、ボス長さとの関係で決めます。

基本的には、

キー長さ ≦ ボス長さ

となるようにします。

例えば、ボス長さが35mmであれば、キー長さは25〜32mm程度の範囲で検討することが多いです。

ただし、キーを長くすれば必ず良いというわけではありません。キー溝が長くなると、軸の断面欠損も大きくなり、軸の強度低下や応力集中につながります。

そのため、必要以上に長いキー溝は避け、伝達トルク、ボス長さ、加工性のバランスを見て決めます。

設計例

以下の条件で、キー溝設計を考えます。

  • モーター出力:0.75 kW
  • 回転数:1500 rpm
  • 軸径:24 mm
  • ボス長さ:35 mm
  • 用途:プーリ固定
  • 回転方向:一方向
  • 衝撃:小さい
  • 軸材質:S45C
  • ボス材質:FC250

トルク計算

T = 9550 × 0.75 / 1500
= 4.775 N・m
= 4775 N・mm

接線力

F = 2T / d
= 2 × 4775 / 24
= 約398 N

キー寸法

軸径24mmの場合、標準キーとしては代表的に 8 × 7 クラスが候補になります。
実際にはJIS B 1301などの規格表で確認します。

ここでは仮に、

キー寸法:8 × 7
キー長さ:28 mm

とします。

せん断応力

τ = F / (b × L)
= 398 / (8 × 28)
= 1.78 MPa

面圧

σc = F / ((h / 2) × L)
= 398 / ((7 / 2) × 28)
= 4.06 MPa

この条件では、計算上はかなり余裕があると考えられます。

ただし、実際の設計では、起動トルク、衝撃荷重、正逆回転、頻繁な起動停止、ボス材質、使用環境なども考慮して判断します。

図面指示で注意すること

キー溝を図面に指示する際は、以下を明確にします。

  • キー溝幅
  • 軸側キー溝深さ
  • ボス側キー溝深さ
  • キー溝長さ
  • 端部形状
  • 公差
  • 適用規格
  • 必要に応じて表面粗さを記載

キー溝設計でよくある失敗

よくある失敗例について紹介します。

キー寸法を適当に決めてしまう

軸径に対して大きすぎるキーを選べば強くなる、という考え方は危険です。

キーを大きくすると、軸側の溝も深くなります。
その結果、軸の断面欠損が増え、軸自体の強度が低下する場合があります。

基本は、軸径に対応した標準キーを使用します。

ボス材質を考慮していない

キーが鉄で十分な強度を持っていても、ボス材質が弱い場合、ボス側キー溝が先に変形することがあります。

特に注意が必要なのは、以下のような部品です。

  • アルミプーリ
  • 樹脂ギヤ
  • 焼結部品
  • 鋳物ボス
  • 薄肉ボス

このような場合は、キー材質だけでなく、ボス側の面圧や肉厚も確認します。

軸方向固定をキーに期待してしまう

キーは回転方向のトルクを伝達するための部品です。
軸方向の抜け止めとしては基本的に考えません。

軸方向に抜ける可能性がある場合は、以下のような構造を併用します。

  • 止めねじ
  • 止め輪
  • 段付き軸
  • ナット締結
  • エンドプレート
  • クランプ構造

キー締結を使う場合は、回り止めと抜け止めを分けて考えることが重要です。

正逆回転や衝撃を考慮していない

正逆回転や頻繁な起動停止がある場合、キーとキー溝のすきまによって衝撃が発生することがあります。

その結果、以下のような不具合につながります。

  • カタカタ音
  • フレッティング摩耗
  • キー溝の変形
  • 位相ずれ
  • ボスの割れ

位置決め精度が必要な場合や、正逆回転が多い場合は、キー締結以外の方法も検討します。

例えば、

  • クランプ締結
  • テーパロック
  • 焼きばめ
  • スプライン
  • セレーション
  • クランプ式カップリング

などです。

キー締結が向いている用途

キー締結は、以下のような用途に向いています。

  • モーター軸へのプーリ固定
  • 歯車の回り止め
  • スプロケットの固定
  • カップリングハブの固定
  • 一般産業機械の駆動部

構造が分かりやすく、加工や交換もしやすいため、汎用的な機械設計で使いやすい締結方法です。

一方で、高精度な位置決めが必要な用途、ガタを嫌う用途、正逆回転が多い用途、高速回転でバランスが重要な用途では、別の締結方法を検討した方がよい場合があります。

まとめ

キー溝設計では、以下のポイントが重要です。

まず、キー寸法は軸径から標準寸法を選定します。
次に、伝達トルクからキーに作用する接線力を求め、せん断応力と面圧を確認します。

特に面圧は、キーそのものだけでなく、ボス側キー溝の変形や摩耗にも関係するため注意が必要です。

また、キーはあくまで回り止めの部品であり、軸方向の抜け止めは別に設計する必要があります。

キー締結はシンプルで使いやすい構造ですが、軸径、キー寸法、ボス材質、荷重条件、加工性を考慮して設計することが大切です。

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